ミサトさんは
日本を離れていた ひと月の間に 私を切ろうとした、と言った。

それはつまり 私との関係を切り離したいということ。
私のことを友だちとして見る、ということ。
私たちにとっては それが最善だと彼女が判断した。

でも 私はもう始まってしまった。
どうすればいい?
どうしたら ミサトさんの判断を変えられる?

ベッドの中で考えていると ドアを開けて 誰かが部屋に入ってきた。
暗くてはっきりとはわからないが その誰かは私のほうを見ているようだ。
私は目を開けていたが 相手だって私が目を開けているのは見えないだろう。

「起きてる?」小さい声が聞こえた。

やはり、という気がした。
私を突き放そうとしたことを 友だちとして謝りに来たのか。
私は目を開けたまま じっとしていた。
これなら眠っていると思われるだろう。


そのまま どのくらい時間がたったかわからない。
静かにドアが閉められた。
部屋の中には 寝息ひとつたてずに眠っている同期の子と
ノロノロと上半身を起こして 呆然としている私しかいない。

なぜ ミサトさんは来た?
理由は 相も変わらず 2つに1つだ。
どちらにしても 私はミサトさんともう一度 話をすべきだ。
それならもう…
もう考えるのは やめてしまおう。

決心したとはいえ 行動に移すのに また時間がかかった。
素足で床に下り ドアを開けて廊下に出て 隣の部屋の前へ行く。
鍵がかかっていたらどうしようと一瞬、思ったが
ドアは ちゃんと閉まっていなかったらしく
押しただけで 音も立てずに開く。

2つのベッドが 両側の壁に沿って 分かれて置かれていて
右のベッドには 同期のユミちゃんが寝ているのは知っている。

左のベッドに歩み寄る。
暗くても 近くに行けば ミサトさんが起きているかどうかわかるだろう。
私は考えることをやめ まっすぐにベッドまで進んだ。
ベッドの横で 床にひざをついて ミサトさんの顔を覗いてみる。
ミサトさんが私を見ているのがわかり 何か言わなければと焦る。

「私を切ろうとした…」
なに、このセリフ。 いきなり どこから攻めるの、私。

ミサトさんは起き上がって 私を制した。
「待って。ユミが起きるかもしれない」
ユミちゃんは寝つきが悪いらしく ちょっとした物音でも目を覚ましそうだ。
「隣へ行こう」

促されるまま 私はミサトさんと一緒に 自分の部屋に戻った。
戻ったはいいが どうしていいかわからず 私は突っ立ったまま。
ミサトさんは 空いているベッドに腰を下ろした。

さっき 自分がつぶやいた言葉に いったいどう続ければ・・・
いい言葉が思いつかない。
ミサトさんは こっちを見ている。

・・・
先に動いたのは 私のほうだった。

ミサトさんの前まで歩き 両手でミサトさんの両肩をつかむ。
ミサトさんは人形のように動かない。
両手をそのまま 彼女の背中に回し
彼女の体に 自分の体を寄せる。
私の耳が 彼女の耳に触れた時に ミサトさんが言った。
「切ろうとしたけど、無理だった」

その声が
空気を通過して耳に入ってくるのでなく
触れている耳に 振動が直に伝わって聞こえてくることに 胸がじんとする。
もちろん その言葉の意味もだった。

気づけば ミサトさんはベッドに横たわり
私は彼女の体に覆いかぶさっている。

彼女の柔らかいが弾力のある頬を 自分の頬でなでる。
肌を触れさせるのが 本当に心地いいとわかる。
そうやって顔を動かしていて ずらしていくと
私の唇が彼女の唇の端に触れて なんとなくこれはマズイと思い
そこで止めようとしたのだけれども
逆に彼女のほうが顔をずらして 私の唇に唇を合わせた。

感動のあまり 思考が止まるという表現があるが
それとは ちょっと違う。
思考に費やす力を 感じ取るほうに多く配分するのだ、と思う。
今 全身の感覚を総動員して ミサトさんを感じ取ろうとしている。

少したってから唇を離して あらためてミサトさんの顔を見ると
ミサトさんは照れて ちょっと笑う。
本当に この人がいとおしいと思う。

ミサトさんが手を伸ばして 私の頭をはさみこみ 引き寄せる。
私もためらうことなく 彼女に顔を寄せる。
彼女の頬、額、唇、首や鎖骨の部分に 唇をあてる。
彼女も能動的に動いて 私をベッドに横たえ 同じことをする。

---

ここで 思い出してください。
今 私たちがいるのは 2人部屋です。
私とミサトさんが ベッドの上でもつれ合っている その横では
同期の子が寝ています。
数メートルしか離れていないところに。
壁のほうを向いて寝ているとはいえ 寝息もたてずにいる友人。
もしかしたら 目覚めていて 隣のベッドの異様な気配に気づき
声もたてられずにいたとしたら…
友人よ、すまん。

---

ミサトさんは 自分の部屋に戻っていった。
1人になったベッドの上に横になり
全身の肌の感覚が おかしくなっているのに気づいた。
何かまだ まとわりついているみたいに感じる。

眠らなきゃ。
もうすぐ夜が明ける。
少しでも眠っておかないと。明日の練習もハードだ。



この時の 私の気持ちは
「時間がかかったけれども やっとここまで来た」

ミサトさんのほうは 「こんなところまで来てしまった」

この食い違いが その後の二人の間で
ずっと重たい影を落とすことになる。




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拍手コメントくださった・・・
★R(L?)さんへ
わぁー、コメントありがとうございます。
お礼が遅くなってごめんなさい。
何がキッカケだったか思い出されましたか?
こうやってコメントなどで 繋がるのも 不思議な縁ですね。
今はいろんな方と繋がりが持てて とても面白いと感じています。
また来てくださいね!

★Sさんへ
すーっかり遅くなってしまいましたが、ようやく3まで進みました。
一応、私の中では5つでワンクールです。
私もPC使いこなせていませんよ。ブログの設定も説明読んで、どうにかってくらいで。
よろしければコメントも付けていってくださいね。
拍手コメントだと お礼がとっても遅くなってしまい、申し訳ないので…
もしかしたら 私が目標としているブロガーさんのブログ、
Sさんも愛読されていたかもしれませんね!
また来てください。そしてコメント入れてみてくださいね。
2011.12.30 Fri l 揺さぶられる日々 l コメント (6) トラックバック (0) l top

コメント

No title
初めまして・・・・・
みさとさんとのこと・・・・毎回、なぜか涙が出そうになります。文章の持つ空気感がすごくせつないです。
でも、楽しみにしています。よいお年を!!
2011.12.30 Fri l mana. URL l 編集
Re: No title
> manaさん

はじめまして。
コメントありがとうございます!

うっわ、そう言っていただけると、
私も泣いてしまいそうです。感激のあまり・・・

いったいどういう方が 私のブログを読んでくださってるのかなぁと
いつも思うのですが、manaさんにも何か通じるものがあったのでしょうか?
せつない恋愛・・・とか。

どうぞよいお年を。来年もよろしくお願いします!
2011.12.31 Sat l アル. URL l 編集
キターーーー(^∀^)

はわわわわ、
ドキドキしっぱなしです。
そしてなんだかエロい(笑)

体調はどうですか?
続きも気になりますが、まずは体調管理を優先してくださいね!
2011.12.31 Sat l 山田. URL l 編集
No title
ぎゃ!!!

ついにここまできた!!
アルさん。
押し倒すなんてなかなかやりますね。
なかなかの急展開に
股がジンジン
胸がドキドキします!!

それでは寒い日が続きますがくれぐれも体調に気を付けてくださいねー!
2011.12.31 Sat l ナモ. URL l 編集
山田さま
> 山田さん

こんばんは。ゲレンデの女王、山田さま。
体調を気遣ってくださって ありがとうございます。
私のほうはもう大丈夫です。
単なる睡眠不足続きによる頭痛でしたので(おい)
山田さんもお体大事になさってください。

エロい?最高のホメ言葉をありがとう。
でも 私アルの体のどこをはたいても エロさは出てきませんよ。
うーん、残念。

どうぞよいお年を。来年もよろしくお願いします!
2011.12.31 Sat l アル. URL l 編集
> ナモさん

こんばんは。
ナモさんまで体調を気遣ってくれて ありがとう。
体が丈夫なだけが自慢だったはずなのに…

押し倒したんでなくて 引きずり込まれたというのが正しいかと…
なんせMですからねー、言われるがままです。

コメントありがとうございました。
どうぞよいお年を。来年もよろしくお願いします!
2011.12.31 Sat l アル. URL l 編集

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