もうすぐミサトさんが帰国する。

試練の1ヶ月がもうすぐ終わる。

この1ヶ月間 どうにかしてミサトさんのことを考えないようにしていた。
考えると 会えないという この状況に押し潰されそうになるから。
でも 思考に隙間ができると 結局はミサトさんのことを想ってしまう。
自分の意思でどうにでもできるものでもないな、と観念するしかなかった。

でも ひと月がたった。やっと会える。
見ないようにしていた旅程表を引っ張り出して
出発の日から頭に刻まれていたはずの帰国の日を 何度も確認する。


旅行中は電話一つよこさず ほんまに私を翻弄する人だわ。
「拝啓 ○○様」のハガキは数通届いていたけれども
そりゃやっぱり生身の方がいいでしょ。


帰国当日 私は自宅で身を清めて待っていました。
ミサトさんから「帰ったよ」の連絡が来るのを。

ミサトさんは どうやら私を好きになってくれたみたいだけど
お互いに好きだという気持ちがあったとしても
私たちを 恋人どうしとは呼べない雰囲気がありました。

空港まで迎えに行けるほど 私たちの関係は熟していない。
というのが正解。


・・・
その日一日 連絡はありませんでした。
眠りにつく時刻まで待ってみたけれども 何もなかった。

次の日になってようやく電話がかかってきました。

「昨日、帰ったよ」
「お帰り。旅行は楽しんできた?」
「うん。めっちゃよかったよ。行ってきてよかった」
「体はなんともない?1ヶ月、日本食を食べてないやん」
「大丈夫だよ。なんともないよ。○○さん(アルの姓)は?」
「バイトばっかりしてたよ。そういえば、もうすぐ合宿だね…」
「部活の話はあまり せんといてほしいなぁ」

自分の喋り方が 明らかにぎこちないのが分かりました。
自然に喋ろうとしても ぶっきらぼうになったりして すごく変。
ミサトさんは いつもと変わらない様子でした。

あ。名前を呼ぶとき 姓のほうで呼ばれた。
ファーストネームのほうで呼ぶのは 文書限定なのか。


ひと月ぶりに電話で喋ったのだが 淡々と話は済み
電話を切る。

もしや 私たちは友人の関係に戻ってしまったのか?
出発前に 私をあんなに揺さぶっておいて
帰国したら 落ち着いて 冷静な彼女。

---

ミサトさんの帰国から数日後。
毎年恒例の夏の合宿が始まりました。
(巷はクリスマスで盛り上がっておりますが このブログでは あくまで夏!です)

フェリーに乗って とある県に移動。1週間の合宿。
練習がきついのは相変わらずですが
私にとっては ミサトさんと一緒に寝食ともにするのが
楽しみであって 実はきつい。

ミサトさんとペアを組んで練習するときは
体に触れないと できない練習だから
意識しないで触れようとするのに
触れると どうしても 引き寄せられたときのことを思い出してしまう。
まともに顔も見られない。
顔を見ると 何か変なことを言ってしまいそうだ。


夜は夜で すぐに寝てしまえばいいものを
いろいろと考え込んでしまって 眠れない。
ミサトさんとは 部屋が別なのが幸いだった。

泊まっているホテルは もともと女子寮だったところを改装したみたいで
2人部屋しかなかったから 男子と女子 階を分けて部屋割りをした。
いつもなら 合宿のときに利用するのは 大部屋が基本の旅館だったが
今年は女子の意見を取り入れて 基本2人部屋のこのホテルにした。

私は同期の子と一緒の部屋 ミサトさんは隣の部屋だった。

2日目に さっそくミサトさんから呼び出しを受けた。
「夜、海に散歩に行くから 顔、貸して」

こ、怖い。
ふだんどおりの口調なのに 怖すぎる。
なんだろう?何を言われるんだろう…

夜になりホテルを抜け出して ミサトさんに従う。
ミサトさんは 別に怒ってる風でもなく ふだんと変わりない様子。
心臓がドキドキしてるのは 私だけか。

海岸に着き テトラポットに2人で腰掛ける。
今から言われることは 2つに1つだ。
どちらを言われるにしても 心が締めつけられるだろう。

「あのね。」
最初に口を開いたのは 彼女のほう。
「旅行に行ってる間ね、切ろうと思ってた」

ズキンと胸が痛んだ。

「切るって、何を?」
「あなたのことを。まだ間に合うから」

ああ やっぱりそっちのほうだった。
ノンケ女子に告げた後に やってくる苦痛。
2つに1つ。

瞬きをしないようにした。
目をつむると 涙が落ちるかもしれない。
でも 涙が落ちなければ 私は泣いていない。

それ以上の話をすることもなく
また歩いて ホテルに戻る。
ミサトさんは もしかしたら 私に申し訳ないと思っているのだろうか。
表情からは 何も読み取れない。
「お休み」
「お休み~」
私は なんともないよーという顔をして 自分の部屋に入った。
同室の子は隣のベッドですやすやと寝ていた。

もう時間も遅い。早く寝よう。
さっき浜辺で言われたことは 早いこと忘れよう。
寝てしまえば きっと忘れる。
明日になれば 友人に戻る。

---

眠れない。眠れるわけがない。
暗い中で 目を開けて考えていた。
このままでいいのかな。
いや いいわけない。
じゃあ どうするの?
どうしようもないじゃないか。
・・・
ぼんやりしたまま つらつらと考えていた。
何気なく ベッドから 入り口のドアのほうへ目をやる。
ドアがすっと開いた。
誰かが そこに立っている。



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拍手コメントくださった・・・
★Hさんへ
初めまして。
そしてすみません!拍手コメントへのお礼を入れ忘れてしまい
今あわてて追記しています。
「青い花」、「ささめきこと」
なるほど、漫画だといろいろあるのですね。
コメントありがとうございます。またお越しください。
2011.12.24 Sat l 揺さぶられる日々 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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