「フジタさん。どうぞ私のクルマに乗ってください」

「え? いいんですか?」

もちろん いいですとも!

私は 喉から心臓が飛び出しそうになるくらい緊張しながら
うなずきました。


職場の飲み会があり 数台のクルマに分かれて帰ることになりました。

フジタさんの家と私の家は 同じ方向なので
当然私が乗せるものという使命感から
フジタさんに乗っていただきました。

フジタさんを乗せるのは初めてではないのですが
やはりすごく緊張します。

帰るのが同じ方向のヒラタさんも送っていくことになり
3人で私のクルマへ向かいます。

「狭いですけど どうぞお乗りください」

フジタさんは スッと後部座席に乗りました。

あれ?
後ろですか?

ヒラタさんが助手席に座ります。

うーむ・・・
こういう配置ですかー

ヒラタさんのほうが家が遠いので 当然の配置なのですが
ヒラタさんを先に送ってから
車中に2人きり・・・という目論見は はずれました。

まぁよい。

今日はフジタさんの家がどこなのか
しっかり記憶して帰ろう。

だいたいの場所は知っているのですが
家がどこなのかまでは はっきり聞いていないのです。

この際 送りがてら 自宅の場所を把握する。

こうなるともう 単なるストーカーです。

ストーカー・アル田はバックミラーを覗きながら
後部座席のフジタさんへ話しかけます。

「ドアまで送りますから 近くに来たら教えてくださいね」

「適当なところでいいですよ、歩きますから」

フジタさんは やんわりと遠慮しているようです。

「いえ、大丈夫ですよ。ドアまで送りますよ」

アル田、しつこい。

「遅くなるとヒラタさんにも悪いですし・・」

フジタさん、まだまだ遠慮気味です。

「あ、私なら大丈夫ですよー。遅くても大丈夫ですからー」

「ほら、ヒラタさんもこう言ってくださってますから」

アル田、執拗。


そんなことを言っているうちに
フジタさんの家の近くまで来ました。

「ささ、フジタさん。どのあたりですか?」

「ええっと ヒラタさんを送るんだったら
 この道をこう行ったほうがいいかな・・・」

「え? フジタさん、私たちは適当に行けますから
 気にしなくていいですよ。
 それよりも 家の場所を・・・」

「あ、ここで!」

ちょうど交差点にさしかかり 赤信号で停車したところです。

「え?ここ!?」

「ええ、ここから歩くから大丈夫。降りますね!」

リアドアを開けて フジタさんは さっと降りました。

ドアを閉めるときには
「アル田さん、送ってくれてありがとう。
 Nさんとがんばって! じゃ、お休みなさい」

ドアがパタンと閉まりました。

フジタさん・・
行ってしまった・・
なんだか 送ってもらった男には家を知られたくない、とでもいうような?


後続車は来ていなかったけれども
クルマを発進させました。

バックミラーを覗いても フジタさんの姿は見えず
結局 家の割り出しには至りませんでした。

しかも 「Nさんとがんばって!」(※)

(※Nさん・・・アル田の職場にいる、頼りになる男性。おそらく独身)

そういえば
「Nさんとアル田さんがどうなるのかが職場で唯一の楽しみ」って
フジタさん、言ってたもんなー


「そうそう、アル田さん。Nさんとは最近どうなんですかー?」

ヒラタさんからのダメ押しを食らいながら
夜の闇のなか クルマを走らせました。

===

翌日。
フジタさんから朝一番にメールが送られてきました。

ドキドキしながら開封。

---

アル田様。

おはようございます。
昨日は彼氏のように送ってくださってありがとうございます。

---



おおぉぉ・・
か、彼氏・・!!!







(ちょっと待て、アル田。彼氏・・・”のように”、でしょ?)
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2013.10.13 Sun l フジタの人事-仕事のできる女 l コメント (8) l top

コメント

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2013.10.13 Sun l . l 編集
No title
飲み会の後、日本全国どこでも夜は特に治安が悪いので自宅まで送ることは当然のように思ってきましたが、フジタさんのように遠慮される人もいるのだなあと不思議に思いながら読ませていただきました。なぜ遠慮されたのかしら?そちらが気になります。ますます面白くなってきましたよっ。
2013.10.13 Sun l モノクロ. URL l 編集
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2013.10.14 Mon l . l 編集
非公開Lさんへ
まぁまぁ、落ち着いてくださいな。
次がどうなるのかは 私も知りたいところです。
なにしろ 現在進行形なもんですから。
どうぞお気を静めて またどうぞお越しください。

いや、それよりもLさんの職場に
こんなクールな女性はいませんか??
2013.10.14 Mon l アル. URL l 編集
モノクロさんへ
やっぱりそこがクールなんじゃないでしょうか。
人には甘えない。そして人を甘えさせない。

なぜ遠慮されたのか?
そりゃやっぱり ストーカー・アル田が危険だから!!
2013.10.14 Mon l アル. URL l 編集
非公開Sさんへ
恋愛対象として、ですか?
うーん、どうなんでしょうね・・?

Sさんは私のブログを最初から読んでくださったんですよね?
記事の数が多すぎて 疲れませんでしたか?
でもそこまで読めば もうそろそろアルの実態が
つかめてきたのではないでしょうか。
2013.10.14 Mon l アル. URL l 編集
No title
近くまで送ってもらいつつ
家の前までなんて申し訳ないよと
信号で颯爽と降りる。

さすが。

ヒラタさんがいなかったら、人目のない路上に停めて
「アル田さん…実は私アナタのことが…」
「え?フジタさん…
 私もフジタさんのことが…」
って展開を希望しますが。

アルさん、フジタさんを押し倒してしまいましょうか。
2013.10.15 Tue l hiro. URL l 編集
hiroさんへ
あ、コメント欄にて 午前1時の裏バージョン(脚本byhiroさん)が展開されとる。
今度の脚本家は押し倒すところまで ご希望なんですね。

・・・ダメでしょ?

hiroさん、一番のコメンテイターなんですから
アルの実情はご存じでしょう?
アル田の希望もご存じでしょう?
2013.10.20 Sun l アル. URL l 編集

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