お酒を飲んで 上機嫌。
会話も朗らかに進みます。

目の前に 憧れの人、フジタさんがいるのです。
ふだんの私なら 緊張しすぎて吐きそうになるか
何をしゃべっていいかわからず オタオタとするだけです。

でも さっき フジタさんと一緒に梅酒サワーを注文し
ゆっくり飲めばいいものを
一気にあおってしまったアル田。

そんなムチャな行為が功を奏したのか
私の口はなめらかに動きます。

フジタさんは 私の話すことを
おもしろそうに聞いてくれました。

===

30分ほど前 私は駅の改札口でフジタさんを待っていました。

仕事あがりのフジタさんを待つ間
私はドキドキする胸を押さえ
呼吸を整えながら 立っていました。

仁王立ちになるよりも
やっぱりモデル立ちのほうが
フジタさんが私を見つけてくれたときの印象が良いはず。

私は 改札口に向かって斜め30度ほどの角度を保ち
なるべく自然な感じで そこにいるというようなイメージで
フジタさんを待ちました。

しかし。

この数時間前。

私は連日の鼻出血をおさえるため
病院で処置を受けました。

麻酔はどうにか切れているようなのですが
なんだか 鼻の奥が怪しいのです。
油断すると 鼻水がたらりと落ちてくる感じ。

気取って 立ってはいるものの
ティッシュペーパーで 今、鼻を押さえるべきなのか
いや、押さえている間にフジタさんが現れたら
格好悪すぎるし・・

逡巡しているうちに 電車が到着し
たくさんの乗客が改札口から出てきました。

その中で フジタさんが私のほうに近づいて来るのが見えました。

「待たせてごめんなさい!」
「いいえ、大丈夫ですよ」

大丈夫ですよ、フジタさん。
私、待つのは平気なんです。

1時間も前から このあたりをウロウロしていたとは言いません。

病院での診察と処置が 意外に早く終わってしまったので
フジタさんとの食事会に合う 候補のお店を
何軒か偵察して回っていたのです。

「どこに行きたいですか?」
「アル田さんの行きたいところなら どこでもいいですよ」
「うーん、じゃ、○○に行きましょうか」

私はくるりとフジタさんに背を向けて
フジタさんの1歩前を 歩き出しました。

そして こっそりと手に忍ばせていたティッシュで
鼻を押さえました。

===

フジタさんが 行ったことがないという店を選びました。
ふつうの居酒屋なのですが このあたりではわりと高層の
ビルの最上階にあり
夜景を見ながら 食事ができるのです。

もちろん 夜景を眺める余裕は
まったくありませんでした。

「駆けつけ三杯」ではありませんが
最初に注文した梅酒サワーを ハイペースで飲み
フジタさんから引き継いだ仕事のことを話しました。

仕事に対して 斜め60度くらいのアル田ですが
前任者のフジタさんには 聞きたいことがいくつもあるのです。

フジタさんは 仕事に対する私の疑問や
不安に思うことに対して
丁寧に そして的確に答えてくれました。

どうして こんなにすごい人の後任が 私なんだろう。

フジタさんのアドバイスの一つ一つが
とてもありがたく 嬉しいのに

フジタさんの言葉を 聞けば聞くほど
自分の「至らなさ」が露呈されていく。

この気持ちを いったいどう表現すればいいのだろう。

私は メモ代わりにテーブルの上に置いていた
iPodを取り上げました。

フジタさんのアドバイスを 控えておこうと思ったのです。

「あ、アル田さん、それ私と一緒ですよ」
「えっ?」

フジタさんが バッグからiPodを取り出しました。

「ね!」
「あ、ホントですね」

思わぬところで フジタさんと共通のものを持っていたのがわかり
なんだか嬉しくなりました。

「アル田さんはどんな音楽を聞くんですか?」
「いや、私はあんまり音楽を入れてないんですけど・・」
「そうなんですか?」
「クルマのほうには たくさん入れてますけどね」

自分が好んで聴いている楽曲については
フジタさんには 言わないことにしました。

きっと 楽曲がマイナーすぎるから
フジタさんとの会話が そこで終わってしまう。

「フジタさんは どんな音楽が好きですか?」
「私はね・・」

彼女が言う ソロで歌っている男性の名前を
抜かりなくiPodにメモしました。

「そういう使い方をするんですね!」
「あ、はい。私のiPodは、音楽よりもメモ用ですよ」
「ふーん」
「それと ブラウザを使いますね」
「へぇー、私は使ったことないですねぇ」

私は フジタさんにiPodの画面を見せようとして
ブラウザを起動しました。

「これですよ」

起動したブラウザに 一番に表示されたのは
とあるブロガーさんのブログでした。

私が 駅の改札でフジタさんを待つ間
時間が余っていたので
とあるブロガーさんのブログを読んでいたのです。

・・・
(う、うわーー!)

フジタさんに画面を見せようとしていた私は
思わずiPodを抱えたまま のけぞりました。

iPodの小さい画面には
「ビアン」
という3文字のバナーが表示(しかも若干、拡大)されていました。

こ、こんなバナーを見たら
フジタさんが何て思うのか・・

ほろ酔いどころか 意識しすぎて悪酔いになりそう。

私は グルグルと目が回るような感覚の中で
フジタさんを見つめました。

フジタさんは お酒に強いのか
顔色も変えず ふだんどおりの笑顔でした。

iPodを抱えたまま固まっている 奇行じみた私の動きも
あまり気にはしていないようです。

そろそろ 仕事以外の話をしてもいいかも。

勇気を出してフジタさんを誘った理由
なんだったっけ?



(まずは フジタさんネタからいってみました)
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2013.02.02 Sat l フジタの人事-仕事のできる女 l コメント (6) l top

コメント

三文字
その三文字にギョッとすること、ありますよね!
私の場合、フジタさんのような方の前ではありませんが、
例えば家族や友人と どこかのお店の話をしていて、
「ホームページあるかなぁ?」なんて キーワードを入れようとしたら
検索窓の下に出る閲覧履歴欄に
“同性愛・ビア・・・_恋愛ブログ村”と表示されていて、ビックリしたり(笑)
そういうときって、メールのやりとりをしてたりするときと違って、
周囲も遠慮なく画面を覗き込むんですよね~++;

悪酔いしそうなグルグル状態を、アルさんはどうやって立て直したのでしょう?
大変、続きが気になります。
2013.02.03 Sun l ♪ねこ♪. URL l 編集
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2013.02.03 Sun l . l 編集
No title
偶然にも好きな人、素敵な人が同じ物を持っていたら嬉しいですよね。

そして「ビアン」の3文字。
自分が意識しているだけで
案外、他の人の目には入ってないのか
バッチリ見られているのか…

アルさんの穴と
………あ、鼻の。
フジタさんとの営み
………あ、会話の。
引き続き楽しみにしてます。
2013.02.03 Sun l hiro. URL l 編集
Re: 三文字(♪ねこ♪さんへ)
レズビアンブログを読まれる方は 皆さん経験されているのかもしれませんね。

バナーで冷や汗をかく人が出ないよう
私も以前からバナーを変えています。
でも今度は レズビアンブログを読んでいる意識のない人が
何気なくバナーをクリックしたら
「同性愛」だの「ノンアダルト」だの出てきて
ビックリされるかも・・

立て直してるつもりで 実はぬかるみにはまっているのかも?

2013.02.03 Sun l アル. URL l 編集
Re: 罪(非公開HAさんへ)
> 罰として どんなネタでもいいですから
> コンスタントに楽しませて下さい。

わ、私にそんな罰を・・・?
お仕置きされるのって 嫌いじゃな・・・あ、いや・・

> コメント強化ウィーク終了です (笑)

終わるんかい!
2013.02.03 Sun l アル. URL l 編集
hiroさんへ
どうなんでしょう?
その3文字は 見えているのでしょうか?

私の場合は まさにフジタさんの目前に
「ほら、これです!」と画面を差し出すつもりだったので
相当慌てました。

ええっと、続きが長引いてしまい 申し訳ありません。
2013.02.03 Sun l アル. URL l 編集

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